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韓国映画『大洪水』は、2025年9月18日に第30回釜山国際映画祭の韓国映画の今日の特別プレミア部門で世界初公開されました。
Netflix配信のSF災害スリラーとして注目を集めていますが、「パニック映画だと思っていたら、なんだか違う様子になってきた」「ストーリーが複雑で意味がわからない」「洪水シーンは迫力あるけど面白くなかった」と感じる人も少なくありません。実は『大洪水』はパニックサスペンスではなく、SFスリラー映画だったのです!
混乱してしまったあなたや私のために、この記事では映画の深層に潜むテーマや象徴を徹底解説します!
あらすじ
要約
小惑星衝突による洪水に沈む世界で、AI研究者アンナは6歳の息子ジェインと共に高層アパートからの脱出を試みる。
国連やSWAT、謎のエージェントに翻弄される中で、ジェインが実はアンナのAIを基盤に作られた人工の子どもであること、そして世界崩壊の裏で人類存続のための極秘計画が進められていたことが明らかになる。
しかし物語は何度も同じ状況を繰り返し、タイムラインが分岐していく。アンナは息子と引き離され、探し、失い、再会しようとする苦しみを何千回も体験する。
最終的に、これらの無数のタイムラインは、瀕死のアンナが自身の意識をアップロードし、母子の感情を再現・学習させるために行われたシミュレーションだったと判明する。十分なデータが集まった後、宇宙ステーションで新たな人工の身体を得たアンナとジェインは、母と子として再び人生を歩むことを許される。
感想と考察
「梨泰院クラス」や「The Witch 魔女」でファンになったキム・ダミさん主演ということで興味を惹かれました。
タイトルからして「デイアフタートゥモロー」のようなパニック映画だと思って観ていたので、途中からの急カーブで「オール・ユー・ニード・イズ・キル」や「オブリビオン」的なタイムループするやつか、とちょっと面倒くさい映画なんだ・・・。
と思っていたらさらに複雑になって「インターステラー」「テネット」あるいは「インセプション」っぽくなって、何がなんやら。
「大洪水」で検索すると面白いかどうかよりも「意味が分からない」が一番にくるほど難解な作品なんですよね。そこで、意味が分からないと言われる部分を紐解いてみましょう。
どこまでが現実でどこからがループなのか
まず、国連は何年も前から小惑星が北極に衝突し、それによって大洪水が引き起こされ人類は滅亡する可能性を知っていました。人類絶滅を防ぐために人類を”人工生命体”として存続させるプロジェクトにアンナも研究員として参加していました。「母と子」を作るプロジェクトです。そうしてジェインは作られたのです。
生命体は完成しましたが複雑な感情を持たせるための「感情エンジン」を作る任務をアンナが担うことになりました。「母と子」のつながりを通じて複雑な感情を作る研究を始めます。実験体を母親に設定して子どもを隠す。子どもを探す過程で数々の困難に直面することに。失敗したらまた始めからやり直す。極限状態で母親が子どもに対する行動を何度もシミュレーションしてデータを得ようとします。
それから5年後―――北極に小惑星が衝突したことによって大洪水が引き起こされ、アンナと息子のジャインが住むソウルにも大洪水が押し寄せてきます。
高層マンションの低層階はあっという間に水没し、アンナはジャインを連れて逃げようとしますが、ジャインはぐずってアンナを困らせます。
逃げるアンナ親子をヒジョと言うエージェントに救出されヒジョの先導で屋上までたどり着き救出チームと合流しますが、チームが欲しがったのはジャインのデータだけでした。

アンナを助けていたヒジュは結局誰なんだ?と言う話なのですが、明確にはわかりませんでした。宇宙船の中でヘルメットをかぶっていた人なんじゃないかなと思うのですが、どうでしょう?
アンナはジャインと引き離され、研究施設がある宇宙ステーションに向かいますが、爆発して破損した他のロケットの破片がアンナの乗る宇宙船に衝突し、アンナも負傷します。怪我を負ったアンナは先が長くないことを悟ると「自分が実験体になります」と志願します。
ここまでが事実になります。
そして意識が戻ると「大洪水が起きた日」に戻っていました。そこから何千回にもわたるループが始まるのです。
1回目と同じようにジャインを連れて逃げようとしますがジャインはしつこく書いた絵を見て欲しがり、また「僕はなんでずっと6歳なの?昨日も6歳、昨日の前も6歳だった」といいます。
ジャインは毎回隠れますが、見つけることができないまま、そのタイムラインは終了します。どうしてもジャインを見つけたいアンナ。
そして、前回までは無地だったアンナのTシャツには「491」の数字が。
ここからアンナは何度もループを始めます。でもちょっとずつ前回とは違う状況に。助けなかった少女ジスや妊婦を助けたり、強盗に立ち向かっていったり。
死ぬ度に元に戻り、変わっているのはTシャツの数字だけ。
「787」
「1931」
「4007」
「7993」・・・
何度も何度もループする中でアンナはジャインが描いていた絵を思い出します。あんなに何度も「絵を観てほしい、ママの携帯に送ったから」と訴えていたジャイン。
スマホには屋上のクローゼットに隠れるジャインが見た景色を書いた何千枚もの絵がありました。最初の別れの時に「屋上のクローゼットに隠れて」とアンナに言われていたことをジャインは守り続けていたのです。
21499回のループでアンナはやっとジャインを見つけることができて、ループを阻止したのです。ジャインの成長を見守り、自分自身も成長していく事でアンナはプログラムを越えた感情エンジンを作ることに成功しました。

宇宙ステーションに向かう途中で負傷し、別の宇宙船に救助されたあと、感情エンジンを作成するためのシステムに自分の意識をアップロードするように志願した時からジャインを見つけてシステムを構築するまで何千回ものシミュレーションが行われましたが、それはアンナの人生最後の1時間でした。
この部分は「今際の国のアリス」の設定とちょっと似ていますね。
ラストは宇宙ステーションから再生した地球へと向かう複数のポッド・・・
ポッドには感情エンジンを搭載した人工生命体であるアンナやジャインたち新人類の姿が。
まとめ
まず、「人類を存続させるために人造人間を作るってもう人類存続してないじゃない」と言うツッコミはおいといて、国連の計画は、人類全体を救うための合理的で冷酷なプロジェクトでした。
でも、アンナを動かし続けたのは「人類」ではなく、いつも「ジェインただ一人」。
何千回ものシミュレーションで彼女が選び続けたのは、正解でも効率でもなく、感情として間違えようのない選択でした。
洪水は世界の終わりの象徴で、階段を上る行為は、絶望の中で何度も立ち上がる意志。
そしてアンナが選び続けた「母である自分」こそが、AIにも、文明にも、最後まで模倣できなかった人間性だったのだと思います。
この映画、派手さはないけれど、観終わったあと、しばらく胸の奥に水が残るタイプの作品ですね。

